ダイヤ買取のためになるNEWS
報告書をまとめるためにデータを解析し、撮影した何時間分ものフィルムを見ながら、私はある位置に据えつけられたカメラを通じて、現在のギフトショップの機能性が、商品の閲覧から購入にいたることを知った。
ある日、ギフトショップの店員と話したところ、ある女性はメキシコの外交官夫人で、母国へのおみやげにしゃれたオルゴールを買おうとしていたのだった。
高価なオルゴールを十数個も買うと、代金は9000ドルにもなった。
彼女は休憩が終わらないうちに支払いを済ませておこうとして急いでおり、しかも商品宅配の手続きをしなければならなかった。
さらに、外交関係者ということで、売上税を免除してもらう手続きもあった。
控え目に言っても、ややこしい手続きである。
しかもこの手続きは、店員が10代の少女の買い物を処理するあいだ待たされた。
先にレジに並んでいた少女は、自分の買い物、バレリーナの小さい人形のついたペンを手にしていた。
私のような門外漢の学者にも、レジの列を少々手直しし、もっとわかりやすくしたほうがよいことははっきりとわかった。
この二つの買い物の処理は、同じ店員に扱わせるべきではない。
そのとき、私の頭にぱっと電球がともった。
都会の文化人類学者のシールを利用して、ショッピング環境への人びとのかかわりを研究してはどうか?その2、3年前、私は著名な社会学者で作家のA・GとJ・Fの論争を近いところで見ていた。
Jはニューヨークおよびニュージャージーの港湾管理委員会の技術責任者で、当時はニューアーク国際空港の計画および建設という巨大事業に取り組んでいた。
そしてJは、アカデミズムの世界への不満をぶちまけていた。
専門の学者に部下の技師や建築士の手伝いをしてもらおうとしたのだが、期待していた明快な助言をするどころか、自分の知識を現実の設計に応用することについて学者たちははなはだしい不快感を示したのだ。
論争ではGに分があった。
だが、いまでもはっきりと覚えているが、私はこう思った。
Gと働くよりもJと働いたほうが楽しそうだ、と。
リンカン・センターの仕事が終わってまもないある晩、私は数人の友人とともにグリニッチ・ヴィレッジのナイトクラブにいた。
CBSの傘下にあるエピック・レコードの若い幹部が同席していて、私は彼に、店内の出来事を調査するアイデアの話をした。
学問のシールをショッピングに向けてみれば、知るべきことは何かがわかるのではないかという発想からだ。
ビールを何杯も飲むうちに、私のアイデアが面白そうに聞こえたにちがいない。
彼はこう言ったのだ。
「企画書を送ってくれないか!」翌朝、私は意欲に燃えて早起きし、タイプライターを引っぱりだして、自分のプランを打ちだした。
それを送って待つこと、そう、およそ一年におよんだ。
その間にも、企画書を再送したし、電話もかけた。
だが、向こうからは何も言ってこなかった。
振り返れば、これはショッピングの科学の暗黒時代だったといえる。
そんなある日、青天の霞震というか、CBSレコードで市場調査を担当している女性からこんな話があった。
会社の誰かがどこかの壌まみれのファイルのなかから私の企画書を発見し、たいへん興味をもった、ついてはいまもレコード店の調査に興味があるかおたずねしたい、と。
もちろんです、と言いながら、私は心のなかで小躍りした。
アメリカの大企業が現に5000ドルもの大金(と私には思えた)を払って、現代人のショッピングを私に調査させようというのだ。
私はすぐさま数人の学生に電話し、ノートと微速度撮影用のカメラを用意して、ニュージャージー州北部のショッピングモールにあるレコード店へと向かった。
あれからおよそ20年が過ぎ、数十万時間におよぶビデオテープを蓄積し、膨大な観察をこなしてきた今となっては、このときの調査はいじらしく思えるほど原始的だった。
だが、当時はいろいろな発見がすさまじい勢いで飛びこんでくるように感じたものだ。
たとえば、調査をした70年代の末には、伝統的なシングル盤45回転のレコードがまだ主力商品だった。
賢明にも、その店は《ビルボード》誌のシングル・ベストチャートをレコード棚のそばに貼りだし、客の購買欲を刺激していた。
撮影したフィルムを見ると、主に45回転レコードを買っていたのは思春期の子供たちだった。
だが、チャートが壁の高いところに貼りだされているため、子供たちは爪先立って首を伸ばさなければチャートの首位に何があるのか見られなかった。
店の支配人にチャートの位置を下げるよう進言してから一週間後、彼は45回転レコードの売上げが20%も伸びたと電話してきた。
どうだろう!チャートを下げたらこの効き目だ!われわれはその週末、長い時間を費やして業界用語でいうキャッシュ/ラップ(会計/包装)の行列に並ぶ人びとを観察した。
店の設計者や販売マネジャーがどう考えようと、会計/包装エリアはいろいろな意味で、どんな店でももっとも重要な部分である。
処理がてきぱきしていなかったり、一目でわかる仕組みでなければ、買い物客はいらいらして嫌になってしまう。
会計を待つ行列が長かったり混雑していたりすると、店に入るのさえためらうことも少なくないのだ。
この店では、入口のすぐそばに新譜の巨大なディスプレイをいくつか置いていた。
レジからわずか数フィートのところである。
店がすいているときはいいが、混んでくると、レジに並んだ客の身体でディスプレイが隠れてしまう。
われわれは、支柱を立ててビロードのロープを張りわたし、列から人がはみでるのを防ぐよう提案した。
今回もそのアドバイスはすぐに効力を発揮した。
ディスプレイされたレコードの売上げがみるみる上昇したのだ。
そんなことはいささか見えすいているのではないかって?たしかに、あれほどの長時間を観察や撮影や計測やインタビューなどに費やしたあとでは、そうだろう。
しかし、それまでこういうことは外見から隠されていた問題だったのだ。
レコード店の客を観察するうちに、われわれは奇妙なパターンに気づいた。
P売場(思い出してほしい、これはCD以前の時代だ)はつねにカセット売場よりも混雑している。
しかし、売上げは両者が相半ばしていたのだ。
客を追ってみて、その理由が明らかになった。
Pのカバーは大きいので、曲のリストや写真が見やすい。
そこで、カセットを買う客は、Pを眺めて内容をたしかめてから、自分が買うと決めたものをカセット売場へ取りにいったのだ。
われわれは、P売場の通路を広くして、買い物客が押しあいへしあいしないですむような提案をした。
売上げにひびくからだ。
ひどく混みあう売り場にはもっと丈夫なカーペットを敷くようにすべきだとも。
この調査に関する最後の思い出は、私がいまでも人によく見せるフィルムから得られた。
そこにはクラシック音楽のテープを万引きしている若い男性の姿が映っている。
彼がテープを盗むところを何度も見たあとでようやく気づいたのだが、彼がテープをすべりこませた袋は、そのショッピングモールのどこにも出店していないチェーンのものだった。
この豆知識をクライアントの警備担当者に伝え、そういう「場違いな」袋を店内で見かけたら気をつけたほうがいいと告げた。
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